こんにちは。子育てをしながらPR会社の代表を務め、中小企業診断士・PRプロデューサーとしても活動しているヨネザワです。弊社では、外部広報室長という専任広報を社外から担う伴走サービスをしています。
中小企業の経営者からよくいただくお悩みのひとつが、「プレスリリースを書いて、発信してもメディアに載らない」というもの。
「うちの商品やサービス、記者さんの目に止まるような魅力がないのかな…」
と手応えのなさに戸惑い、次のリリース作業が後回しになってしまうケースをたくさん見てきました。ですが、掲載されない理由の大半は魅力不足ではなく伝え方にあります。
今回は、年間50件以上プレスリリースを書いている私から、メディアに取り上げてもらうために現場で実践しているポイントを、具体例を交えながら解説します。
メディアに取り上げられないのは、単なる広告になってしまっているから
プレスリリースを送っても、なかなかメディアの目に留まらない。その最大の理由は、内容が「記事ネタ」ではなく「企業の宣伝文」になっていることです。
プレスリリースの主な読者は、言うまでもなくメディア関係者です。彼らが本当に知りたいのは、「なぜその製品・サービスを始めようと思ったのか」「どんな社会課題を解決しようとしているのか」といった開発者の想いや社会的意義です。
ここが薄れてしまうと、どれほど優れた商品でも残念ながら「また宣伝が来たな」とスルーされてしまいます。
製造業のイメージを覆す意外性〜女性7割の町工場
神奈川県横浜市の町工場では、弊社で事業内容や経営理念を深掘りするうち、「従業員構成」という意外な強みが浮かび上がりました。製造業では珍しく、従業員の7割以上が女性、その多くが子育て中です。柔軟な勤務体制や職場環境を整えることで、女性が長く働ける会社づくりを実践していました。
この「女性7割の町工場」という切り口でオンラインイベントを企画し、プレスリリースを発信。複数のメディアがイベントに参加いただき、複数の新聞社から「働きがいのある中小企業」として取り上げていただきました。製造業=男性職場という固定観念をくつがえす意外性が、記者の関心を引いたと考えられます。
自社の強み×社会の関心事を考える
私が中小企業の広報担当者向けに不定期で開催しているセミナーでは、まず 「社内に目を向けてみましょう」 とお伝えしています。お客さまから繰り返し褒められる点や、社内のユニークな制度など。社員にとっては当たり前でも、そこにこそメディアが興味を示すネタが潜んでいるからです。
ただ、それをそのまま発信するだけでは十分とは言えません。社会の関心事と掛け合わせるひと工夫を加えることで共感が生まれ、話題性も高まります。メディアも「これは面白い!」と注目しやすくなるわけです。
そのためには、社会問題や制度改正など、世の中の動きを常に把握しておくことが欠かせません。私自身、毎朝新聞を読み、同業者がSNSに投稿したプレスリリースもチェックしています。「こういう切り口があったのか」 と気付きを得ることで、自社の強みをより効果的にアピールできるようになります。
意外と見落とされがちなのが、記者クラブの活用
多くの人は「とりあえずプレスリリース配信サービスを使おう」と考えがちですが、本当に大切なのは自社のネタと親和性の高いメディアを選ぶことです。
その出会いの場としておすすめしたいのが記者クラブ。新聞社・通信社・テレビ局などの記者が常駐する任意団体で、多様なメディア関係者の目に触れるチャンスが一度に得られます。
私自身、記者クラブ経由でメディア掲載に結びついた事例を数多く見てきました。意外なことにプロの広報担当者でも活用していないケースが多いのですが、人脈ゼロでもアプローチできる開かれた窓口ですから、ぜひ積極的に利用してみてください。
さらに、記者クラブへの投げ込みと並行して地域媒体にも情報を発信すると、露出の機会が一気に広がります。実際、私が支援している企業でも、地域での露出を積み重ねた結果、日経新聞大手メディアから取材依頼が入りました。
全国新聞やTV局のプロデューサーは、取材先を新聞の地域面や、地域TV局から見つけています。地域で話題になること、また地域の報道機関が取り上げていることから信頼も高まり、全国メディアから取材依頼がくるのです。注目される流れが生まれるのです。
良好なメディアリレーションを築くことも忘れずに
メディアに一度取り上げられて満足してしまうのは、広報活動としてはもったいないことです。単発で終わらせず、継続的に報道してもらうには、記者や編集者と良好な関係、いわゆるメディアリレーションを育てることが欠かせません。
メディアリレーションとは、企業と記者が互いに助け合える関係を築くための広報活動の一環で、ここが強固になるほど「掲載→認知度向上→さらに取材依頼」という好循環が生まれます。
メールよりも電話の方がメディア担当者の記憶に残る
この信頼関係を深める方法の一つが、「ひと声」をかける電話です。プレスリリースを送る前に「近々、こういう内容のリリースをお送りします」と要件を15〜30秒で簡潔に伝えるだけで、記者の印象は大きく変わります。取材先を探している立場からすると、事前に趣旨を把握できることで情報選別の手間が省けるのは、ありがたいんです。
「しつこいのでは」とためらう必要はありません。むしろ歓迎されることのほうが多いでしょう。
地道な積み重ねがメディア掲載につながる
プレスリリースが取り上げられない最大の理由は、宣伝色が強すぎて魅力が伝わらないことです。記者が知りたいのは、開発者の思いや、その取り組みが社会にどう役立つのかという点にほかなりません。
保育園や町工場の事例が示すとおり、自社の強みを社会課題や世間の関心事と結びつけることが重要です。社会性や新規性のある切り口で発信すれば、記者のアンテナに引っかかりやすくなります。
メディアの記者や編集者に目を止めてもらえるよう、プレスリリース作成時は以下の要素を意識してみてください。
- 社会性(社会課題の解決につながる)
- 新規性(新しい取り組み・視点がある)
- 意外性(常識や予想を覆す)
- 時事性(今話題のトピックやタイミングに合っている
- 地域性(地域に密着した話題である)
記者クラブへの投げ込みや担当記者への短い電話など、地道な働きかけを続ければ、メディアに取り上げられる機会は少しずつ広がっていきます。こうした小さな努力の積み重ねが、継続的な掲載につながる近道です。
「広報スタッフを置きたいが人手やノウハウが足りない」「プレスリリースを出してもメディアから反応がない」など、広報に関するお悩みがあれば、ぜひ当社の外部広報室長サービスをご検討ください。
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