「広報が大事なのはわかっている。でも、担当者がいない」。中小企業の経営者の方から、いちばん多くいただくご相談です。
結論からお伝えすると、専任の担当者がいなくても広報は始められます。最初の3か月は「発信」よりも「準備」に時間をかけることがおすすめで、やることは5つだけです。この記事では、その5つと月ごとの進め方、外部の力を借りて始めた組織が支援2年目で掲載数を支援前の約4.7倍にし、社内に広報の専門部署までできた事例をご紹介します。
この記事は、中小企業診断士・PRプランナーとして3年間で160本以上のプレスリリースを書き、支援先の報道掲載につなげてきた、ワンパーパス株式会社 代表の米澤智子がまとめています。
広報担当者がいない会社が、最初の3か月でやる5つのこと
- 3年後に「何の会社として知られたいか」を決める(1か月目)
- 社内の話題が集まる窓口を1人決める(1か月目・兼務でOK)
- 社内のネタを棚卸しして、発信の年間カレンダーをつくる(2か月目)
- 最初のプレスリリースを出し、記者クラブに届ける(3か月目)
- 結果を振り返り、次の発信につなげる(3か月目以降、毎月)
専任の担当者がいなくても、広報は始められる理由
広報というと「メディアに詳しい専門の人がやるもの」と思われがちです。しかし、記者が知りたいのは広報担当者の腕前ではなく、その会社で起きている出来事が社会とどうつながり、社会のどのような変化を象徴しているのか、です。
つまり、広報のスタート地点は「書く技術」ではなく「社内の話題を拾える状態をつくること」。これは兼務の担当者でも、経営者自身でも始められます。足りない専門性は、研修や外部の力であとから補えばよいのです。
1か月目:「3年後に何の会社として知られたいか」を決める
最初にやるのは、発信のゴールを決めることです。「いろいろな媒体に載りたい」ではなく、3年後に「〇〇といえば、この会社」と言われたい〇〇を一言で決めます。
ここが決まると、どの話題を優先して発信するか、どのメディアを狙うかがぶれなくなります。採用を強くしたいのか、新しい取引先を増やしたいのか、地域での信頼を高めたいのか。経営戦略から逆算するのがポイントです。
同じ1か月目に、社内の話題が集まる窓口を1人決めましょう。専任でなくて構いません。弊社の支援先でも、人事や総務と兼務しているパターンがほとんどです。「新しい取り組みや、取引先からうれしい言葉をもらったら、この人に一言伝える」というルールを社内に共有するだけで、ネタの集まり方が大きく変わります。
2か月目:社内のネタを棚卸しし、発信カレンダーをつくる
次に、社内にある「ニュースの種」を洗い出します。新商品や新サービスだけがネタではありません。
- 地域初・業界初の取り組み
- 自社が持っている数字や調査結果
- 社会課題とのつながり(人手不足、脱炭素、女性活躍、障害者雇用、地域貢献活動など)
- 職人や社員など「人」のストーリー
- 経営者のストーリー(多額の借金を抱えた、社員が全員辞めてしまったなど、どん底からのV字回復は鉄板のネタです)
- 学校や地域との連携
- 創業〇周年などの節目
- 季節や行事に合わせた話題
洗い出した話題を、12か月のカレンダーに並べます。広報活動は、話題を「いつ出すか」でニュースになるかどうかが大きく変わるため、記者が関心を持ちやすい時期に合わせて配置するのがコツです。
ネタを考えるときに役立つのが、日本記念日協会に登録されている記念日です。弊社の支援先の事例では、5月30日の「ごみゼロの日」にタイミングを合わせて、ゴミ削減の取り組みをプレスリリースしたところ、Webメディアに取り上げていただきました。
3か月目:最初のプレスリリースを出し、記者クラブに届ける
カレンダーの中から、いちばんニュース性の高い話題を1つ選び、最初のプレスリリースをつくります。A4で1枚、冒頭に「誰が・いつ・どこで・何を」をまとめるのが基本です。
書いたリリースは、地元の記者クラブに直接届けるのがおすすめです。記者との人脈がなくても、記者に直接届けられます。書き方と届け方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

1本目で掲載されなくても、がっかりする必要はありません。半年前や1年前に発信したリリースが、後から取材につながることも珍しくありません。大切なのは、出した結果を記録して、次の話題選びに活かすことです。
よくあるつまずき3つ
1. SNSの投稿だけで終わってしまう
SNSは手軽ですが、記者が情報を集める手段は主にプレスリリースです。SNSは続けつつ、ニュース性のある話題はプレスリリースにして、メディア関係者に直接届けましょう。
2. 担当者が一人で抱えて、続かなくなる
窓口の担当者が自分でネタを探しに回るのは限界があります。社内から話題が「集まってくる」仕組みと、経営者が広報活動を後押しする姿勢が欠かせません。特に広報活動は、重要度は高いものの緊急度が低いため、後回しにされがちな仕事です。だからこそ、経営者自らが「わが社は広報活動を経営として重視している」とトップダウンで示すことが大切です。
3. 「載ってほしいこと」と「ニュースになること」がずれている
自社の宣伝したいことが、そのまま記者の関心になるとは限りません。ここが一番つまずきやすい点で、次の事例でも成果を分けたポイントになりました。
事例:外部の代行から始めて、支援2年目で掲載数が支援前の約4.7倍に。広報の専門部署もできたA社
外部の力を借りて広報体制を育てた例として、弊社が支援しているA社の取り組みをご紹介します。
最初は外部の代行で「発信を止めない」ことから
支援を始めた当初は、社内に広報の専門部署も人員もなく、弊社がプレスリリースの作成とメディアへのアプローチを代行していました。まずは外部の力で発信を続け、掲載の実績を積み重ねることを優先しました。
プレスリリースをその企業が立地する地域の記者クラブに地道に届けることを重ねていき、これまで関係がほぼ途絶えていた担当の新聞記者から取材依頼がくるようになりました。
1年後、社内に広報の専門部署が誕生
発信の実績が積み上がった結果、支援開始から1年後、社内に広報の専門部署ができました。部署ができたことで、社内の情報が一か所に集まる体制が整いました。
社員研修で「ニュースになる話題」の目をそろえる
さらに、社員の方を対象に弊社が講師となって研修を行い、「ニュースになる話題」と「単なる広告になってしまう話題」の違いを理解していただきました。その結果、社内から集まる話題のニュース性が上がり、弊社がリリースにして発信する本数も増えていきました。
数字で見る変化

A社の支援を始めたのは2024年度です。2025年度は12月までの9か月で掲載57件と、弊社が支援する前の2023年度の1年間(12件)の約4.7倍になりました。
これは、リリースを出していない話題でも、報道機関から取材の申し出をいただくことが増えたことや、1つの取り組みが複数の媒体に取り上げられるようになったことが大きな要因です。
地元のメディアに掲載された情報を見て、全国放送のニュース番組にも取材されるようになりました。
この事例からわかること
最初から社内で全部やろうとしなくて大丈夫です。外部の力を借りて発信を始め、成果を社員に見せて「広報は経営に必要な活動だ」と実感してもらいながら、社内に「話題が集まる仕組み」と「ニュースを見分ける目」を育てていく。この順番が、担当者がいない組織が広報を根づかせる現実的な道筋です。
よくある質問
Q. 広報の担当者は、専任でないとだめですか?
兼務で大丈夫です。大切なのは「社内の話題がこの人に集まる」という窓口を1人決めることです。総務や人事、経営企画との兼務から始めている会社がほとんどです。
Q. 最初から外部のPR会社に頼むべきですか?
社内に経験者がいない場合は、最初の1年だけでも外部と組むのがおすすめです。ただし、任せきりにせず、社内にネタが集まる仕組みと、ニュースになる話題を見分ける目を育てることをセットにしてください。
Q. どれくらいで効果が出ますか?
プレスリリースが掲載につながるのは、早ければ数か月です。一方で、社内にネタが集まり、掲載が安定して増えていくまでには1〜2年かかるのが一般的です。
広報の体制づくりをご相談ください
ワンパーパス株式会社では、広報担当者がいない、または一人で手探りしているBtoB中小企業に向けて、広報戦略づくりから社内で広報をまわせる体制づくりまで、6か月間の個別伴走コンサルティング(120万円〜・税別)でご支援しています。社員向けの研修・講演(2時間10万円〜・税別)も承っています。

